【イベントレポート】令和7年度 第4回コミュニティイベント「事業戦略・事業構築」

公開日
2025/12/08

事業づくりの“視座”を引き上げる、深い学びの時間

鹿児島県が主催する「かごしまスタートアップ成長支援プログラム(CHEST)」は、県内で挑戦する起業家の成長を支援する取り組みとして、令和7年度も継続してコミュニティイベントを開催しています。

11月27日(木)、第4回となるコミュニティイベント「事業戦略・事業構築セミナー」がライカ ワークラウンジ(鹿児島市中央町)で開催されました。
本イベントでは、事業成長に携わってきたお二人のゲストを迎え、参加者が真剣に耳を傾ける濃密な学びの時間となりました。


セミナー講師紹介

きざしデザイン合同会社 代表 月原 直哉 氏

リクルート・ソフトバンクでの事業統括、新規事業支援会社での副社長・取締役を歴任。
現在は企業の事業立て直しや新規事業開発、エグゼクティブコーチングなど、多角的に企業成長を支援しています。


株式会社welzo 取締役 後藤 基文 氏

中小企業の再生・M&A、官民ファンドREVICでの事業支援を経て現職へ。
経営企画からブランド戦略、新規事業、研究開発まで幅広い領域を統括し、「みんなのサツマイモを守るプロジェクト」など地域との協働にも注力しています。

事業をつくるうえで How に縛られないということ

「手段」ではなく「視座」が事業を前進させる

今回のセミナーのテーマは、「事業を考える上で、How(手段)を探さない」
起業家にとって意外性のあるこのテーマについて、両氏は次のように語りました。

Why(目的)とビジョンが曖昧だと、事業は続かない

月原氏は、事業成長には「Why(なぜやるのか)」の明確化が必須であると強調しました。

「Howから始めると、自分の思考の枠を狭めてしまう。
まず“何を実現したいのか”という視座を上げることが大切」

例えば、

  • 「チラシ広告を続けるべきか」
  • 「新しいサービスはどの機能を付けるべきか」
    というHow先行の判断は、事業の可能性を狭める要因になり得ます。

“視座を上げる”と、選択肢が一気に広がる

後藤氏は、事業構築における抽象度の大切さを次のように説明しました。

「Howにとらわれると、“今できること”だけで事業を組み立ててしまう。
ビジョンに立ち返れば、本来あるべき姿を起点に戦略を描ける」

実際の企業変革の現場でも、Howからスタートした組織は成長が頭打ちになることが多いとのこと。
一方で、ビジョンを再定義した組織は、戦略やプロダクトの方向性が大きく変わり、事業成長が加速するケースがあると語りました。

「自分の認知は100%正しくない」

セミナーでは、経営者が持つ“思い込み”にも言及がありました。

月原氏は、コーチングや心理学の経験を踏まえ、

「人は“見たいものしか見えない”。
だからこそ、他者の視点や質問を通じて認知を更新し続けることが重要」

と述べました。

例えば、

  • 赤ちゃんが生まれると、街のベビー用品が急に目に入る
  • 欲しい車種を意識すると、その車ばかりが気になる

といった現象は、脳の仕組みによるもの。
事業でも同じで、ビジョンが明確になると必要な情報が自然と入ってくると説明しました。

これには参加者も深く頷き、会場は一体感のある雰囲気に包まれました。

参加者との対話から生まれた“気づき”

セミナー中盤には、事業者からの質問にも丁寧に回答が行われました。

「自分が経験していない業界の顧客を、どう理解すべきか?」

この問いに対し両氏は、

  • “顧客視点に立つと決めること”が第一歩
  • 自分ごと化するための「ビジョンの言語化」
  • 市場の声を徹底的に聞くことで、認知のズレに気づける

といった実践的な視点を提示しました。

抽象と具体を往復しながら議論が進み、
「事業の本質」への理解が深まる時間となりました。


中学生のライトニングピッチ ― 堂々とした挑戦に会場が沸く

交流会前には、中学生によるライトニングピッチが行われました。
テーマは「ペットの安心を守る新しい保険サービス」。

  • マイクロチップとの連携
  • ペットホテルやペットフード等のオプション
  • 保護団体が継続的に活動できる仕組み
  • 飼い主に万が一があっても“家族として守られる”未来像

等が、丁寧に整理されたスライドとともに発表されました。

参加者からは、

  • 「資料の完成度が高い」
  • 「発表姿勢が素晴らしい」
  • 「中学生でここまで考えられるのはすごい」

と驚きの声が上がり、自然と応援の気持ちが生まれる場面となりました。


参加者の声

セミナー後の交流会では、
起業家・学生・支援者・企業関係者が自由に意見交換を行いました。

  • 「HowではなくWhyから考える重要性が分かった」
  • 「他の参加者の事業の捉え方が刺激になった」
  • 「ここでの出会いが、次の事業アイデアにつながりそう」

といった声が多く聞かれ、
CHESTが目指す“挑戦者同士の学び合い”が実現された時間となりました。


まとめ ― 視座を上げ、問い続けることが事業を前進させる

今回の「事業戦略・事業構築セミナー」は、事業づくりの基盤となる“ビジョン”や“認知”を見つめ直す貴重な機会となりました。

参加者が真剣に耳を傾け、時に深く頷きながら学びを吸収する姿は、鹿児島におけるスタートアップ文化の確かな広がりを感じさせます。

CHESTプログラムでは、引き続き毎月イベントを開催し、挑戦者が新たな学びを得て、次のアクションにつなげられる場を提供してまいります。

👉 次回の開催情報はCHEST公式ページにてご案内いたします。ぜひご参加ください。

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