【イベントレポート】令和7年度 第2回コミュニティイベント「成功する起業家の条件とは?」
- 公開日
- 2025/09/29
― 成功する起業家の条件とは? ―
鹿児島県が主催する「かごしまスタートアップ成長支援プログラム(CHEST)」は、県内で挑戦する起業家を応援する取り組みとして、令和7年度もスタートしました。毎月実施するコミュニティイベントは、起業家や支援者が一堂に会し、「学び」「気づき」「つながり」を得る場として開催されています。
9月25日(木)、第2回コミュニティイベントがライカワークラウンジにて行われました。当日は県内外から多くの参加者が集まり、熱気にあふれるひとときとなりました。

セミナー講師紹介
今回のメインプログラムは「成功する起業家の条件とは?」をテーマとしたパネルディスカッションです。ゲストには、鹿児島市出身で首都圏を拠点に活躍される2名のベンチャーキャピタリストをお迎えしました。
鮫島 昌弘 氏(ANRI株式会社)
東京大学大学院理学系研究科修了後、三菱商事や東京大学エッジキャピタル(UTEC)を経てANRIに参画。科学技術分野や気候変動関連のスタートアップを中心に投資を行い、累計6本のファンドを運用。鹿児島市出身で、CHESTの公式メンターとしても起業家を支援しています。

中野 哲治 氏(SMBCベンチャーキャピタル株式会社)
三井住友銀行での法人営業を経て2016年に現職へ。シード〜シリーズA期を中心に投資を行い、国内外で多数の企業成長を支援。鹿児島市出身で、これまでもCHEST関連イベントに登壇し、地域起業家の伴走支援に取り組まれています。

パネルディスカッション「成功する起業家の条件とは?」
成功の定義は変化している
議論は「そもそも成功とは何か」という問いから始まりました。
鮫島氏は次のように語ります。
「かつては数十億円規模での上場も成功とされていましたが、現在は『100億円の壁』と呼ばれる基準が生まれています。IPOはゴールではなく、あくまで手段のひとつに過ぎません。」
中野氏も続けます。
「上場すれば成功という時代ではありません。社会的な課題をどう解決するか、何を目的に起業するのかが重要になっています。」
会場では深くうなずく参加者の姿が目立ち、従来の価値観と現在の現実の差に、多くの方が強い関心を寄せていました。

外的要因:環境が起業を支える
成功には起業家の努力だけでなく、外部環境の整備も不可欠です。
- 人とのつながり
「成功している起業家ほど、先輩や投資家から失敗談を積極的に学んでいる」と中野氏。 - 支援基盤の整備
鮫島氏は「熊本では地銀が大学と連携し、研究成果を事業化につなげています。鹿児島でも行政・金融・企業が一体となった体制づくりが必要」と指摘しました。 - 先行事例の存在
「地域から一社でも成功事例が出れば、その周囲に挑戦が次々と生まれる」という言葉には、多くの参加者が共感していました。
内的要因:起業家に求められる資質
一方で、起業家自身に求められる姿勢についても具体的に語られました。
- 選択と集中
「限られたリソースを一点に注ぐ勇気が必要。広げすぎると失敗する例が多い」と鮫島氏。 - 巻き込む力
「弱みを開示できる人ほど、優秀な仲間を惹きつける。尖った強みを持つことが大切です」と中野氏。 - 小さな失敗から学ぶ力
「仮説を立て、小さく試し、失敗を重ねて改善していく。その繰り返しが成功につながります」と両氏は共通の見解を示しました。
鹿児島に期待される可能性

議論は鹿児島の未来にも及びました。
「鹿児島には農業、食品、バイオといった全国的に競争力のある資源があります。こうしたアセットを活かし、地場企業とスタートアップが連携すれば、新しい産業が生まれるはずです。」(鮫島氏)
「利益を出すことはもちろん大切ですが、それ以上に『鹿児島をより良くしたい』というシビックプライドが挑戦を継続的に支える力になります。」(中野氏)
力強い言葉に、会場から自然と拍手が湧き上がりました。
ライトニングトーク(LT)
続いて行われた参加者によるライトニングトーク(LT)では、制限時間3分に込められた多彩な挑戦が披露されました。


- SNS×ブランディング支援
「事業の理念や目的を言語化してSNS発信につなげることが成果につながる」との発表に、参加者は熱心に耳を傾けました。 - メンタルコンサルティング
「心には余白が必要」というユーモラスな切り出しに会場が和み、「心をおにぎりに例えるとふっくらした状態が理想」という比喩に笑い声が上がりました。 - 大学発ベンチャー
「歯磨き不要のキャラメル」の紹介には会場がどよめき、鹿児島特産のお茶を使った新商品や宇宙食への展開構想には驚きと拍手が起こりました。 - エンタメ系スタートアップ
「一瞬で人に喜びを与えるのがエンタメ」と語り、自らの開発商品を紹介。「地方の金融や行政の支援不足」を課題提起すると、真剣に聞き入る姿が見られました。
発表が終わると、登壇者のもとへ質問に駆け寄る参加者も多く、交流のきっかけとして大いに盛り上がりました。
参加者の声
イベント終盤には、数名の参加者にインタビューを実施しました。



- 「生の声を聞けた」
「ネットで調べられる情報もありますが、投資家の方の生の声を聞くことで理解の深さが違うと感じました。鹿児島でこうした機会が得られるのは貴重です。」 - 「鹿児島の課題」
「地場企業や金融機関が、スタートアップを育てるという視点で関わる必要があると感じました。もし大企業が動けば、状況は大きく変わるはずです。」 - 「未来への挑戦」
「法人化に向けて準備中です。5年、10年先を見据えて、鹿児島の人々にワクワクを届けられる事業を続けたいと思います。」 - 「資金調達と規制の壁」
「海外展開を進めていますが、ファイナンスや各国の規制対応が大きな課題です。改善されれば、もっと挑戦の幅が広がります。」 - 「この場にはチャンスがある」
「一歩を踏み出さないと得られないチャンスが、ここには確かにあります。迷っている人にはぜひ参加してほしいです。」
短いインタビューながら、それぞれが抱える課題や未来への意欲が率直に語られました。
まとめ ― 鹿児島発スタートアップの未来へ
第2回コミュニティイベントは、首都圏で活躍する投資家の視点と、鹿児島で挑戦する起業家の熱意が交わる貴重な場となりました。セミナーでの知見、LTでの多彩な発表、参加者のリアルな声を通じて、地域のスタートアップエコシステムの可能性を強く感じられる時間となりました。
CHESTプログラムでは、今後も毎月イベントを開催し、挑戦する人々が互いに刺激し合い、成長を続けるための機会を提供してまいります。
👉 次回の開催情報はCHEST公式ページにてご案内いたします。ぜひご参加ください。
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