【イベントレポート】令和6年度 第2回コミュニティイベント「採択者交流会」

公開日
2024/11/01

鹿児島発のイノベーションを目指し、地域社会に根ざしたスタートアップを応援するかごしまスタートアップ成長支援プログラム『CHEST』が幕を開けました。このプログラムは、地元の企業や個人が地域の課題を解決しつつ成長できるよう支援することを目的としており、企業や住民との連携を通じ、地域経済の活性化を目指します。本記事では、第2回交流会の様子と、「実証支援プログラム」および「アクセラレータープログラム」の採択者の取り組みを掘り下げ、そのビジョンや地域への影響についてご紹介します。

実証支援プログラム採択者の取り組みと挑戦

株式会社クエイル 代表取締役CEO 池田武尚氏


地域の課題に向き合う、AIと音声認識技術を活用した次世代のコミュニケーション支援
池田氏が立ち上げたクエイルは、音声認識技術と生成AIを活用し、高齢者や多忙な住民が手軽に利用できる「電話予約支援システム」を提供しています。これまでに沖永良部と肝付町で実証実験を行い、地域住民の生活をより便利にするためのソリューションを提供してきました。実証実験の中で、例えば日常生活で欠かせない食料品や医療品の移動販売、生活サービスの予約サポートなどが実施され、これらの取り組みが地域住民の生活の質を向上させる重要な役割を果たしています。
今回の実証支援プログラムでは、AIと電話を組み合わせたサービスをさらにブラッシュアップし、新たなサービスの提供を目指しています。この進化によって、地域の住民がさらに便利で快適な生活を送るための支援が拡大することが期待されています。

取り組みのポイント
● 高齢化が進む地方において、IT技術を日常生活に馴染ませることで、デジタルデバイドを解消し、地域の住民の利便性を向上。
● 電話サポートを通じた予約システムは、ITリテラシーが低い人々にも利用しやすく、地域社会の中での孤立化を防ぐための有効な手段です。
● プログラムを通じた知見や成功事例は、他の地域でも応用が期待され、地方創生のモデルケースとしても注目されています。

株式会社モジョカ 代表取締役 野崎弘幸氏

美容業界に革新をもたらすシェアスペースと業界支援
美容サロン運営をサポートする株式会社モジョカは、低価格でレンタルできる美容スペースを鹿児島市で提供し、若い美容師やスタイリストの独立支援を行っています。この取り組みは、ただの経済活動の一環ではなく、地域に必要とされる仕事を創出し、空きビルの再活用を通じた地域経済の再生を目指したものです。モジョカは、さらなる事業展開として霧島市や国分への進出も視野に入れており、地域密着型のビジネスモデルとして注目されています。

取り組みのポイント
● リーズナブルな価格設定で、初期投資のリスクを軽減し、若手美容師がスムーズに独立を果たせる環境を整備。
● サロン運営におけるITサポートを提供し、集客や顧客管理を効率化。これにより、美容師の業務負担を軽減し、顧客サービスの向上にもつなげています。
● 地元住民の生活に身近な「美容」というテーマで、鹿児島全体の活気を高める取り組みが期待されています。

アクセラレータープログラム採択者の情熱とビジョン

AWaytoCoffee 代表 児玉睦氏

コーヒーで地域の絆を強め、地方経済に新たな風を
児玉氏が手掛けるAWaytoCoffeeは、地元の農産物を活かしたコーヒー栽培と観光業を融合したプロジェクトを展開中です。南薩地域に計画されているコーヒー農園の観光施設では、耕作放棄地を再活用し、地域の資源を最大限に活かした新しい観光モデルを構築します。コーヒーが媒介となることで、地元の人々や観光客が集まり、地域の魅力が全国へと広がることを目指しています。

取り組みのポイント
● 耕作放棄地を利用した観光農園の運営は、地域の雇用創出にも寄与し、地方の人口減少や農地の荒廃といった課題解決に貢献。
● コーヒーを通じた地域活性化に加え、地元住民との交流の場を提供し、地域の魅力や価値の再発見を促進。
● 地方から発信する「鹿児島ブランド」として、地域資源の魅力を国内外に発信する新たな可能性を模索しています。

株式会社TSグループ 代表取締役 吉松良平氏

職人育成と技術伝承で地域の産業を支える
元自衛隊員の吉松氏が立ち上げたTSグループは、建設業界の職人不足に対応するための「SaaS型スキル伝承プラットフォーム」を提供。熟練職人の技術を映像やマニュアルとして保存し、後世に伝えることで、即戦力として働ける人材の育成をサポートしています。プログラムでは特にリフォームや塗装業に特化し、小規模な事業者を支援しながら業界全体の活性化を図っています。

取り組みのポイント
● 地域の建設業界を支えるため、職人の技術伝承に重きを置き、地方における人材不足の問題を解消。
● 動画による技術伝達は、従来のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に比べ、効率的かつ確実にスキルが身につくメリットがある。
● 技術を地域内に残すことで、業界全体のスキルレベル向上に貢献し、地元経済の底力を高める役割を果たします。

株式会社fab 代表取締役 星原優氏

DXの力で飲食業界に革命をもたらす挑戦
fabの星原氏は、自社飲食店でのDX化を通じて、労働力不足の課題に対処する技術の実証を重ねています。具体的には、配膳ロボットやセルフレジの導入による無人運営を目指し、省人化でサービスの効率化を図っています。今回のプログラムを通じ、他の飲食店にもDXソリューションを提供し、飲食業界全体の課題解決に取り組んでいます。

取り組みのポイント
● 飲食業界の現場における労働力不足をDXで補い、持続可能な店舗運営の実現を目指す。
● 「DXで目指せホール0人」というキャッチフレーズのもと、効率化と人件費削減を同時に実現し、収益力を向上。
● 鹿児島から全国へと拡がる飲食業界DXのロールモデルとして、次世代の飲食業運営の在り方を提案しています。

CHEST支援プログラムの将来展望と地域への貢献

CHEST支援プログラムを通じ、各採択者はそれぞれの強みを生かして、地域の課題に真剣に取り組み、ビジネスの成長と地域社会の活性化を目指しています。各企業が生み出すイノベーションは、鹿児島だけでなく、他の地域にも大きな影響を与える可能性を秘めており、地方創生においても先駆的な取り組みです。
今後も鹿児島のスタートアップと地域コミュニティが共に成長していくことで、新しい価値が生まれ、地域社会の発展に寄与することが期待されます。

交流会の様子

交流会では、起業を目指す参加者たちが地域に根付くベンチャーキャピタルや同じ志を持つ起業家と出会い、共に未来の鹿児島を築くためのビジョンを共有しました。今回のプログラムでは、「地元での起業の可能性」を強調し、地域活性化のために活動を展開する起業家や支援者が、それぞれの想いを語ってくれました。ここではその一部を紹介します。

コーヒーを通じた地域発信を目指す:AWaytoCoffeeの児玉氏のビジョン

今回のアクセラレータープログラム採択者の「AWaytoCoffee」代表の児玉氏は、コーヒーの出会いにより自身のビジネスを構築しました。もともと東京から移り住んだ児玉氏は、鹿児島の自然の中でコーヒー業界における新たな可能性を感じ、かごしまブレンドのような地域ブランドの立ち上げができたらとも語ります。鹿児島のコーヒーショップが独立して活動する現状に対し、「かごしま知覧茶」のように鹿児島のコーヒーを一つのブランドとして世界に発信するという夢を抱いています。
また、児玉氏はコーヒーの持つ可能性についても語り、「コーヒーは単なる嗜好品ではなく、出会いや地域の価値を紡ぐ媒介だ」と述べています。地域の魅力を伝えるための重要な手段として、コーヒーを活用し、「地元から世界へ」という目標に向けて着実に歩みを進めています。
このプログラムを通じて、その夢に一歩近づいていることが感じられ、児玉氏の情熱とビジョンが、地域活性化に向けた大きな力になることが期待されます。こうした採択者と直接交流できる機会も、交流会ならではの魅力の一つです。

地元を支えるベンチャーキャピタルとの出会いと成長のチャンス

交流会には、鹿児島発の起業家を支援するために「なんぎんキャピタル」の竹内氏と永田氏も参加されました。竹内氏らは「鹿児島から生まれる企業が地域経済の活性化につながる」という強い想いを持ち、鹿児島に貢献する起業家を発掘し、成長を後押しする活動に熱意を注いでいます。

地元ベンチャーキャピタルの柔軟なサポート体制
竹内氏と永田氏は、起業に興味を持つ方々がアイデアの段階でも気軽に相談できる環境を提供することの重要性を強調しました。竹内氏らの支援は単に資金提供に留まらず、事業アイデアのブラッシュアップや具体的な成長戦略の提案にも及びます。また、資金調達においても、出資や株式だけでなく、銀行融資など多様な選択肢を提示してくれるため、起業家は自分に合った最適な資金調達手段を見つけやすくなっています。
地元ベンチャーキャピタルは、鹿児島におけるスタートアップを支えるうえで非常に有益な存在です。参加者の声にもあるように、交流会を通じてのベンチャーキャピタルとの出会いは、新たな挑戦の後押しや貴重なアドバイスを得る機会として、大きな価値があります。

参加者同士が切磋琢磨し合う鹿児島のスタートアップコミュニティ

このプログラムの意義は、起業家たちが一堂に会し、それぞれの事業における挑戦や目標を語り合うことができる点にあります。参加者たちは、互いのビジョンに共感し、協力関係を築きながら切磋琢磨しています。これによって、鹿児島から新たなビジネスモデルや文化が生まれる可能性が広がり、地元に根ざした企業が力を合わせて地域経済を支えるための基盤が強化されていくのです。
例えば、AWaytoCoffeeの児玉氏のように、鹿児島を発信の拠点として考える起業家は他にも多く存在し、プログラムではそのような起業家同士の交流を支える取り組みも行われています。仲間としての励ましや共通の目標を持つ者同士の意識共有が、鹿児島のスタートアップシーンをさらに活性化させる原動力となっています。

鹿児島での起業に興味があるあなたへ

鹿児島のスタートアップ成長支援プログラム『CHEST』は、起業を目指す皆様にとって、ビジネスの種を育てる理想的な場所です。地元に根ざしたベンチャーキャピタルのサポートや、志を同じくする起業家たちとの出会いは、貴重な成長のチャンスとなります。
次回のプログラムでは、鹿児島の起業環境に関心がある方々にとって、地元のビジョンと可能性を共有できる機会が待っています。あなたも、鹿児島の地で新たな一歩を踏み出し、共に地域を支える仲間と繋がってみませんか?

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